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「詩は果して現実の認識手段として小説に劣るのか。何故に今日、日本に限らず世界中で詩の衰弱という現象が見られるのか。ことに日本の文壇では何故にかくも極端に詩が軽蔑を受けているのか。問題はそういうところにあるのだ。」小林秀雄が「詩の問題」でこう書いてから七十五年経ち、果してどのような解決を見たかと考えると、どうやら問題は解決せずに解消したようである。▼今日、詩は小説に比べて軽蔑もされなければ、崇拝もされていない。詩的でない小説と、より詩的な小説と、純粋なる詩の区別を、もはや個人は趣味の問題くらいにしか捉えていないように思われる。作者の意図を汲み取るのにどれほどの想像力を要するか、というところに読者の論点がないのだ。実生活から、世界にはあまりにもたくさんの切り取り方があることを既に理解した人々の前では、ナイフの入れ方そのものが意味を成すような、そんな奇抜な切り口はほとんど残されていないのである。
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