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小林秀雄は林房雄についてこう書いている。「憎まれ口は利くが腹には毒はない、などという男は、そこいらにうじゃうじゃ居るので一向興味が持てぬ。腹に毒もない癖に、憎まれ口だけ余計な様なものである。林の腹にはいつも信念があって、それが燃えているのが透けて見える様なのが、僕には楽しいのだし、又、感心もしているのだ。」▼人の口にはいろいろなタイプがある。現実的なことしか言わない人も居れば、言うこと言うことロマンに溢れる意欲的な人もいる。どちらでも構わないのだ。そこに信念があれば、リアリストもロマンチストも興味の対象たるに足る。ただ、腹に毒もないのに毒持ちのふりをするのが気に食わない、というのである。▼信念のないリアリストは感傷家だ。信念のないロマンチストは空想家だ。彼らは、喋る口の多い処に行けばいくらでも見つかる。十分過ぎるほど世にあふれている。そうして、どうもお互い、興味のあるらしいふりをしている。
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