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千人に一人、才能と余暇を合わせ持つ若者が全力で作品を創り上げたとする。制作十二ヶ月の最高傑作だ。そのクオリティは、納期に追われ二週間で形にしなければならなかったプロの作品では太刀打ちできない。実際、注ぎ込んだリソースが膨大なら、アマチュアがプロを出し抜くことなど普通にある。▼こうした傑作は、実績も信頼もないために、大抵は静かなブームを巻き起こして消えるのが常であった。しかし、冒頭の千という母数が十万になると事情は大きく変わってくる。同じ割合で推移したとて、生み出される傑作の数は今や年に百もあるのだ。いよいよ埋もれるのはプロの作品の方になる。▼大袈裟な話でもない。現に今、創作を生業にするプロはたいへんつらい立場にいる。数の暴力に怖い思いをしている。単発の嵐に呑み込まれて消えるのは、早や明日かもしれないのだ。個人が才能で輝く反面、大衆が個人を押し潰す、そんな二重の側面が共存しているように思う。
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