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将来は作家志望だというある女の子が、こんなことを言っていたのを覚えている。曰く彼女の高校で、学校誌に掲載された投稿小説の優秀作品が、学期末の講堂集会で発表されることになった。その発表作品に、彼女の掌編は選ばれなかった。代わりに、おじいちゃんが死んだことの悲しさを綴った別の子の作品が朗読された。▼どこまで本気かわからないが、こうぼやくのである。いつもそうだ。身内が死んだり、事件が起きたり、そういう特別な出来事に見舞われた人ばかり選ばれる。私の周りはふつうだから、誰も死なないし何も起きない。不公平じゃないか。▼とんでもない邪だと言い切れる人はそれでいい。けれども言い切れない人は、いつか似たような悩みを抱えたことがあるだろう。異常な人々がせめて平凡でありたいと願う傍ら、異常でないことに不平をかこつ平凡な人々がいる。幸せなのは僅かに、平凡を素直に享受している人と、異常を矜持にしている人だけである。
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