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日曜日。デスクに向かう先輩――三十後半の大先輩である――が、いちど帰るわ、と手ぶらでドアに歩き出した。その格好で、どうしたんですか。尋ねると、子供をお風呂に入れなければ、と言う。それは大変ですね、いってらっしゃいませ。疲れ気味の背中を見送りながら、前にもこんなことあったな、と考えていた。▼家庭のある社員は少ない。ほとんどの先輩は独身である。こんな生活ではそれもそのはずだろうと納得するものの、家庭があればあったで土日は家と会社を往復しなければならぬ。そういう光景が自分の中で日常化していることが怖くなる。▼そんな背中を見て育つ後輩は、家庭を持ちたいと思わなくなるだろう。たとえ持ちたくても、持てない人がほとんどかもしれない。統計は独身の若者が増えているという。もっともらしい「社会的分析」など俟つまでもなく当たり前のように思える。負の連鎖は硬い。IT業界では四十代で結婚するのもよくある話だそうだ。
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