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水源のある活き活きした水の上では水草も清らかに浮いているが、水源の無い濁った沼では蓴菜さえ汚らしく見える、こういう喩えがある。命の源としての水の重要さを説いた言葉でもあり、同時に、流れていくものの清潔さを表現した謂でもある。新鮮は動に宿り腐臭は静に絡む。「転石苔を生ぜず」を悪い意味に用いる日本でも、流動の途絶えること則ち淀みは悪であった。▼淀みのなかから醸成される何かに価値があると信じるときだけ黙して坐せ、そうでなければ動け。これは日本のみならず、古今東西に共通する古く深い暗黙知のひとつだと思う。人間が人間である以上、死の表現が静止であることに変わりはないからだ。そう考えれば金銭的にも精神的にも安心・安定している人の方が、かえって芯から死の恐怖を感じるのかもしれぬ。これでもう自分は終わりなのかもしれないという不安に駆り立てられて、傍目には不安のない人生から芸術を織り出した人々は少なくない。
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