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冬山の写真を見ていた。霜枯れの木立、冬ざれの大地、吹雪く枯野の向こう側。そのまた向こうは雪も凍てつく氷の世界で、氷柱や樹氷の鋭角がきらきらしている。冴え冴えとした夜空に白一色の氷を敷いた、きりきりと張り詰めたこの空気に、誰が「りん」の音を当てたのだろう。素晴らしい音だと思う。死に絶えた虫の代わりに冷たい空気が鳴いているようだ。▼都会に豪雪が降られては生活の都合で困ることもあるが、除雪の必要もない山の冬ごもりを見るのは写真でも楽しい。今のところ写真でしか見る機会がないだけで、金と時間があれば何を差し置いてもやはり氷の世界を見に行きたいと思うのである。そのいつかのために氷や氷に関する言葉をたくさん仕入れて、憧れの世界をぴたりと来るいい言葉で表現してやろうと思うのだが、いざその世界に立ったら、寒いだの、冷たいだの、月並みな言葉しか出てこない気もする。ことは単純なものだ。雪暮れの函館は美しかった。
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