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これは素晴らしい、と心の底から感嘆する出来事に出会して、それをぜひ創作の種にと何かの言葉にまとめてみると、頭の中では上手くいく。口に出してみるとさらにそれらしく響くので、さて意気揚々と原稿に挿し込むと、途端に出来事の命が死んでいることに気がつくのである。▼拵えたときと一言一句変わらぬ会心の言葉が紙面の上で死んでいる。原稿を書いたことがある人なら、誰でもいちどはそういう体験をしたことがあるのではないだろうか。文章とは有機体なのだから、というありふれた比喩では到底説明のつかない突然死に見舞われて途方にくれたことがあるのではないか。▼なんだか、物書きというのは原稿にすると死んでしまうものを、なんとか生き返らせようと文章を捻くりまわしているようなものだ。逝去した「素敵な言葉」を書いたり消したりしながら、そんなふうに考えた。音楽も同じだ。絵画も同じに違いない。創造というより、どうも蘇生の仕事である。
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