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ヴィクトル・ユゴーは「レ・ミゼラブル」を発表したとき、その売れ行きがあんまり心配なので、出版社に問い合わせの手紙を出した。なにしろこの作品は、ユゴーの作家生命を賭けた作品だったのだ。出版社は直ちに返答を出した。それを見たユゴーの表情はさぞかし緩んだことだろう。発売日、書店には長蛇の列が出来た。心配もなんのその、後世に残る大ヒットである。▼このときの手紙にひとつ、逸話がある。曰く、このやりとりは「世界でもっとも短い手紙のやりとり」なのだそうだ。ユゴーが記した手紙にはただ一文字、こう書かれていた。「?」――出版社の返答は、こうだ。「!」▼どさ、ゆさよりも二文字短い、しかし完璧な意思疎通である。文字や言葉が意思を伝える道具であり、道具は使い方次第でいくらでも工夫が効くという、当たり前のことを思い出させてくれるエピソードだ。押しつぶされそうな不安のさなかに紡ぎ出したユーモア。作家はこうでなくては。
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