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読書家は眼が悪くなりやすい。そう思われている。たしかに、近い距離で小さな文字を見続けていれば近視は促進されるだろう。しかしこの因果関係は必ずしも正しくない。大学で眼科を専攻していた精神医学者アルフレッド・アドラーは、眼の病気を持つ患者ほど読書熱心になるケースが多いことを発見している。この着眼は後に、アドラー心理学のひとつ「優越コンプレックスの理論」として結実することになる。▼人は、自分が「劣っている」と感じる精神的・身体的特徴に対しては、非常な努力を払ってもこれを克服しようとする。なんとかして弱点を補強しようとし、それが難しければ別の何かを磨いて弱点を補おうとする。聴力を失い、身体で振動を感じる力を身につけた晩年のベートーヴェンが格好の例だろう。▼ここから導き出せる結論は簡単だ。弱点を弱点と認めること。常に弱点の補償を目指すこと。疲れたら、別の力を蓄えること。――それを逃げと思わないこと。
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