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成績の上がらない生徒に「勉強しなさい」と言うことは無意味である。少なくとも、教え導くことにはならない。アドバイスですらない。どちらかというと具体的な指示が思いつかないか、真面目に取り合うのが面倒なときに発される言葉である。「だって、勉強しなきゃ成績が上がるわけないじゃないか。」本人は正論に溺れつづけて腹を立てる。生徒はただ、つらそうな顔をする。▼導くとは道を引くことだ。行く先を示すことだ。ゴールはどのあたりにあるのか、だから次にどこへ行くべきか――必要なのは、地図を描く俯瞰力である。描写力ではない。自分の見てきた世界の地図しか書けないようでは、自分の知らない世界で立ち尽くす人の助けにはなれないのだ。相手が見ている世界を想像し、自分の見ている世界との位置関係を把握しながら、より高く、詳細に俯瞰すること。アラスカの荒野を彷徨い歩く旅人に「シャンゼリゼ通りの歩き方」を渡しても意味がないのである。
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