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「学術をポケットに入れること」が、講談社学術文庫の自負するモットーである。少年の心を養い成年の心を満たす学術が、万人のものになるように――という願いが込められている。「こうした考え方は、学術を巨大な城のように見る世間の常識に反するかもしれない。また、一部の人たちからは、学術の権威を落とすものと非難されるかもしれない。しかし、それはいずれも学術の新しい在り方を解しないものと言わざるを得ない。」▼それから三十五年、学術を身近にという講談社の願いは叶えられた。叶いすぎたくらいかもしれぬ。今や学術は、どこからどこまでが学術かもわからないほど人の耳目に触れるようになった。識者のブログが、有志の動画が、2chまとめサイトが、一昔前なら学術論文にしか書かれていなかったような知識を解説している。そうして、そんなものは学術ではない、実に嘆かわしい、と憤る「一部の人」が現れたところで、時代は正しく一巡である。
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