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悲愴の第一楽章なら232小節目の最高音「ファ」、月光の第三楽章なら130小節目の最高音「シ」、あるいはハンマークラヴィーア第一楽章なら233〜234小節目で主題の和音が大きく変わるところ。ベートーヴェンのピアノソナタには、必ずひとつ「聞きたい場所」がある。ほとんどの場合、聞きたい「単音」ですらある。それほど局所的に、コレという箇所がある。▼どこになるかは人によりけり、皆が同じ音を気に入るとは限らないが、私などは極端に言えば、そこへ辿り着くために他のあまり好きではない部分を我慢している節さえある。逆に言えば、そのためなら多少の我慢してでも繰りかえし聞きたくなる。▼全体に工夫を凝らして飽きさせないのもよいが、飽きる気持ちを我慢させるほどの魅力をひとつところに凝縮するやり方もある。私はその方が好きだ。そうして、私はどうもこれの出来る人が少ないように思う。巧い人ほど、どこもかしこもよく出来ている。
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