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小説の中に一文字の誤字があるとする。気づいてしまえば、それは小説の世界に没入している人間を強制的に現実へ引き戻す記号になる。場所によっては、興が覚めること甚だしいだろう。しかし、二読目、三読目なら、そこに誤字があることを知ってさえいれば、そう煩わしいものでもない。重要でない箇所ならさらりと読み飛ばせばいいし、目を流していれば一文字くらい気がつかないものだ。▼ところが音楽となると、そうはいかぬ。どんなに良い曲でも、ひとつ短いノイズが混入していれば、聴き直すたびに嫌な思いをすることになる。人は曲を「聴き飛ばす」ことは出来ないのだ。▼だから、音楽の制作においては、詰めの甘さが文章以上に響いてくる。聞きたくない場所のある曲は、即ち、聞きたくない曲になるのだ。文の誤字は質を下げるが、音の誤字は作品全体を殺す。ノイズに限らず「嫌な音」がないかどうか、神経質なくらい聴き直してもやりすぎということはない。
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