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ポリフォニー/多声的という言葉を、音楽の世界から文学の世界へはじめて転用したのはミハイル・バフチンである。彼は、一人称モノローグによくあるような作者の意識・声のみが鳴り響くモノフォニックな小説に対して、複数の異なる意識やイデオロギーが作中で同時に展開・衝突するような小説構造をポリフォニー的な小説と称した。ドストエフスキーの長編など、まさにそうした構造を持つ小説の代表格である。▼小説は作者の語りに終始するものではないから、あらゆる散文小説は多声的な要素を孕んでいるとも言える。しかし、たとえば主人公にある立場を描き、反主人公に別の立場を描き、読者の共感はどちらに向かってもよいというようなつくりはポリフォニックとは呼べない。多声音楽がそうであるように、ポリフォニックな小説の面白さもまた旋律同士の絡みあいにある。個々の旋律からは予期できない発見・共感を読者に与えてこそ、旋律交叉の本領というものだ。
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