400
Post/Edit Page
ゆっくり、時間をかけて、試行錯誤しながら、当たり前の音を探している。とくべつな音が見つかることはまずない。見つかるときはいつも、ふつうの答えが見つかる。同じものを、まったく同じものを――それどころか、もっといいものを――人が人なら五分で探し出すだろう。私にはそれが出来ない。どうしても、時間がかかる。▼考えることに意味がある哲学ならともかく、完成品に意味のある制作の世界では、どうせ同じ答えに辿り着くなら早いほうが良いに決まっている。しかし、もし何かゆっくりなことにも良いことがあるとしたら、なんだろうか。▼「愛着」――私は、人が聞いてもなんということはない平凡な音に、執拗な愛着を抱くことがある。これはゆっくりの賜物かもしれないと思う。たいしたものとは思えないが、と一刀に斬り捨てられる出来損ないこそ、いつか助けてあげるべき存在のように感じるのだ。残念ながら、理解してもらえたことは今のところない。
pass:
Draft