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遥か昔、とあるオンラインゲームをしていたころ、読めない名前の人がいた。もう正確なスペルを思い出すことも出来ないが、Fで始まる無秩序な英字のならびであったことだけ覚えている。単語としての発音は不可能だ。けれども、呼び方を訊くまでもなく、知り合いは彼のことをハルさん、ハル君、と呼んでいた。綴りをぼんやり眺めていると、そんな音が浮かんでくるからだそうだ。月姫のNrvnqsrChaosを思い出す。あれをネロ・カオスと読ませるようなものだろう。▼ハルと読めそうだからハルさんにしよう――きっと、誰かがそう言い出したのだ。私はこの愛称が、きっとこんなふうに生まれたんだろうと想像するのが、なんとなく好きだった。今でも素敵な名前だと思う。誰かが、何かの特徴を捉えて、人に渾名をつける。それが広まって、いつしか「ハル」という人になる。その人の存在そのものが、人と人との交流の賜物という感じを帯びる。それを、羨ましく思うのだ。
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