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数多あるデザイン領域の中でも、ユーザーインターフェース(UI)は少々扱いが特殊である。▼昔、天声人語の執筆を長年務めた人の回想録を読んだとき、こんなことが書いてあった。曰く、段落区切りを示す「▼」マークが横に並ばないように、読点の位置に偏りが生じないように、最後の余白が不恰好にならないように、――狭い欄のこと、文の内容だけでなく、そういう見栄えの美しさにも気をつけているという。しかし、そういう配慮は、読者に特別な感銘をもたらしはしない。出来ていれば誰も気に留めないし、出来ていなければ不快を感じるだけだ。▼UIも同じである。使いにくいもの、見にくいものはすぐに嫌だとわかるが、ちゃんとつくられたUIは使い手の意識を素通りする。素通りするということが、即ちUIの出来栄えなのだ。使うためのデザインという機能美。余計な感銘を与えないことこそ、優れた作品であるという、不思議な性質を持っているのである。
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