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私は虫が苦手だ。虫と呼ばれる類の生き物はたいてい苦手だが、よく嫌われる連中に敢えて序列をつけるなら、ムカデのようなでかい多足類が真っ先にだめ、次いで動きの素早いゴキブリ、うねうねした毛虫やミミズ、ヒル……嫌われものの中でも、いちばん許せるのは蜘蛛、という塩梅になる。▼ムカデが出た。小さくて、すばしっこいので捕まえるのに苦労しながら、ふと気がついたことには、私は、止まっているときの虫を気持ち悪いと感じながら、動いているときは案外それに愛着を持っているらしい。どこかへ行こうとしている虫を見ると、変に「頑張れ」という気がして来る。▼虫の移動に「頑張れ」と思うのは、犬や猫の行動に人間的な意味付けをしようとする誤謬の一種かもしれない。けれども私には、彼らはやはり何かを頑張っているように見える。「たとえ人には甲斐のない努力に見えても、あがいている存在」――そういうものに、親しみが湧いているのだと思う。
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