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シャルル・エドワール・ジャンヌレは、あるとき、絵画の展示をぱたりとやめた。1923年のことだ。その後は、絵の仕事をまったくしなかった。画家としての名前が広がりすぎていて、これから精魂を傾けるべきジャンルで素人呼ばわりされることに耐えられなかったのである。ジャンヌレは名前を捨てた。そうして、近代建築の礎となる名著「建築芸術へ」を世に出し、建築の仕事を始めた。▼何か新しい存在として世に認知されたいと思うとき、それまでに築き上げた成功・名声が足をひっぱることがある。別の分野で活躍したい、けれど「あの人が**なんて、ロクなものじゃあるまい。」出る杭を打たんとする世間の的外れな偏見は、いつの世も変わらないのだ。有無を言わさぬためには、言われる前に、さっと結果を残すしかない。人の口を塞ぐのは具体的な成果だ。ジャンヌレが絵をやめて十年後、ル・コルビュジエという建築家の名を知らないものはいなかっただろう。
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