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「うさぎとかめ」の寓話は世界中にある。話の顛末は微妙に違うが、動物の選択と「亀が勝つ」という結果は同じである。寓話の教訓――即ち、勝つために必要なものが違うだけだ。よく知られた日本バージョンでは、「こつこつまじめにやること」で、亀は兎を追い抜く。真面目さ、ひたむきさ、誠実さの賛美である。▼世界がこの寓話に問うているのは基本的に同じ疑問だ。「遅れた者に希望はあるか?」あるなら教えてくれ、というのである。そうして、兎がカメと同じ資質を備えていないという前提を頼りに、各国が各国の賛美する概念を答える。▼しかし「遅れたからこそ何かが出来る」という視点はないのだろうか。カメが見つける宝物――そんなものはない、と言い切る人間は意外なほど多い。塞翁が馬の故事さえ、現実には絵空事だと信じているかのようだ。ナンセンス。兎には荒唐無稽に思えても、カメにしか見えない景色が役に立つこともある。私はそう信じている。
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