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駅舎から出て、何かが変だと思った。読みかけの本に指を挟んで遊歩道へ入る。人は少ない。つい四方を見回してしまう。見つからない。歩いて行く。この過ごしやすい夏夜のどこが妙なのか、ようやく気がついたのは、ふと上を見たときだった。青い。明るい。とてもPM10時の光量ではない。▼本をぱらぱらやると、街灯もないのに文字が読めた。異様な明るさの原因を探してみても、煌々と輝く満月以外には見当たらないので、あれがこんなに夜を明るくしているのかと納得して驚いた。見上げながら歩く。たしかに今まで見たことがないほど強烈な光を放っている。雲に覆われても一向に衰えない。▼もし月に大気や水があったら、その明度は現在の6〜7倍にもなるという。「月の海」がなければさらに白く輝いていただろう。そこまで明るくなくてよかったかな、と甲斐のないことを思う。ひかえめなお月様。星空が見える程度に自分を抑えてくれたのはありがたいことだ。
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