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設定、キャラクター、映像、音。すべてにリアリティを持たせたいと願う、そんなアニメ監督が手がける作品では、音響制作のとき、ある揉め事がしばしば起こるという。花火である。▼花火を見たことのある人なら誰でも知る通り、花火の音は光の炸裂より遅れて聞こえる。通常1秒程度だ。「リアル監督」はここに目をつける。アニメーションと音をずらしてくれ、と指示が出る。ところが音響さんは「それは変ですよ」と言う。何が変なものか、リアルにするんだ。とにかくやってみてくれ、と言われて、しぶしぶずらしてみるとやはり変になる。編集ミスで音がずれたようにしか聞こえない。例外なく「やはり元にもどしてくれ」という顛末になるそうだ。▼デフォルメされた表現形態でリアリティを追求すると、どうあがいても変になることがある。音響さんは長年の経験でそれを知っているのだ。リアルを忠実に模倣することと、リアルに見せることはまったくの別物である。
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