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小説でもそうだが、優れたドキュメンタリーは時間を忘れさせてくれる。あまりにリアルな世界が文字から立ち上がるので、向こうの世界に時間軸を奪われてしまうのだ。緊迫したシーンでは、秒針さえ登場人物と共有しているような感覚になる。行頭に翌日と書かれれば、私の夜も明けたような気分になる。三年後、と書かれたときだけ、少しだけ紙面を離れて冷静になれる。そんな没入状態である。▼ノンフィクションでそこまで感じさせてくれるものはあまり多くない。書かれている対象への興味の度合もあるだろうが、サイモン・シンのシリーズ以上に没頭できるドキュメンタリーにはまだ出会えないでいる。そんな中、今読んでいる瀧口範子『行動主義 レム・コールハース ドキュメント』はかなり感触が良い。文章のリズムと表現の素軽さが、耳に意識を集中する必要のないダンス・ミュージックのように、楽な頭でリアルな世界を読ませてくれる。なかなかの好印象である。
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