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コールハースは、美しさについて語るのが嫌いだった。何事も理詰めの彼が、美しいものを前にしては無言になる。「美しさは目的として追い求めるものではなく、副産物として生まれる」というのが彼の理念らしい。だから、偶然現れた言いようのない美しさを前にして、ふたたび理詰めの頭が蘇るのだろう。なぜこれは美しいのか。けれども、そうそう答えは出てこないので、無言になるしかない。▼美しいものを美しいと感じて感嘆する感性は、人間という生物の生存確率にどう関係してきたのだろう。これは、考えても考えても難しい問いである。なにしろ副産物なのだから。シンプルで美しい。バランスが良くて美しい。複雑怪奇で美しい。なんとでも言える。溶岩の湧き出る噴火口のような、命の危険を感じるような光景さえ美しいのだ。そんなものに見惚れて息を呑むような個体は、美しさなど感じない個体よりも死にやすそうではないか。今はまだ私に確たる答えはない。
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