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昼頃に外へ出たら、厚い雲が果てまでつづいて夜のように暗かった。強風に煽られて銀杏の葉が肩越しに私を追い抜いていく。まっすぐ、長い下りの坂道、グレーの背景に黄色い点描。久しぶりに絵になる風景を見つけた。銀杏の葉を踏んで歩く感触に、つい学生時代を思い出す。農学部のあたりは、積もりすぎた銀杏が霜で濡れて滑りやすかった。工学部に向けてかかる橋を、いつもゆっくり歩いたのが懐かしい。▼夜は夜で、また素敵な月が出ていた。あんまり目が悪いので、実はもう形もわからないのだが、皓々とした丸い光の立派さは伝わってくる。同じ道なのに、昼とは打って変わって明るい二十四時。群青寄りの紫に秋の皎月も名風景には違いないが、見上げて歩きながらどこなに物足りなさを感じていると、飛び出した街路樹の枝が視界にかかって、これだと思う絵になった。なるほどねと納得して、立ち止まらずに通りすぎた。もう絵画にはならない空を見るのもやめた。
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