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欧州人は教会を捨てることで世俗化したが、アメリカ人は教会そのものを世俗化した。イギリスの宗教社会学者、ブライアン・ウィルソンの主張である。▼二十世紀、アメリカにおけるキリスト教の原理主義色――聖書を字義通りに解釈し、現世より来世を重んじる態度――は大幅に減退した。二十一世紀現在、アメリカ宗教人たちの関心は、ほとんど現世に移行していると言ってもいい。彼らが教会に行くのは、もはや神を賛美するためではない。日常生活の喜びのためであり、精神の充足のためであり、あるいは出会いの場として利用しているだけである。▼こうして宗教の宗教性が褪せると、対立する宗教への寛容も生まれてくる。それで心が休まるなら、自由に好きな信仰を持てばいいじゃないか、というのである。実際、五十年前のアメリカでは圧倒的多数を占めていた「キリスト教こそが唯一絶対の宗教である」と主張する信仰者の数も、いまは三割にも満たないのだそうだ。
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