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久しぶりに終電を寝過ごした。タクシーも来ないので、歩きでの帰宅を試みる。雨が降りだしたので、コンビニでビニール傘と温かいほうじ茶を買った。深夜一時。音は無く、道は暗い。▼線路沿いに進んでいたつもりが、いつの間にか離されて、そのフェンスの向こうにあると信じていた線路は、二十分もするとどこかへ消えてしまった。急な上り坂に差し掛かる。地図の記憶が確かなら、山をひとつ挟んでいるので、これは正しい方角に向かえているらしい。しかし、人の気配はない。明滅する黄色いランプ。赤い鉄塔。▼GPSも頼りにならない。いくらマップを更新しても、現在地の矢印は近隣の中学校の校庭で方向だけを変えつづけている。なんだか何かに引き寄せられているようで気味が悪い。距離もわからないほど遠くで明滅するランプが、黄泉への招き灯に見えてきた。とうとうその正体を確かめることなく家に着けたが、あれはたぶん学校のある方角だったように思う。
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