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長く緩やかな氷の坂。通勤路がアスレチックになった。▼ガードレールにつかまりながら恐る恐る徐行する社員の群れである。こんな大行列は滅多に見られない。アスファルトの氷は見た目以上に滑るので、油断した人から転倒していく。私もこのあたりなら大丈夫だろうと加速したところで、何度か足を横に引きずられた。よい方のコートを着てきたのは失敗だった。▼チームだけでも転んだ人、三名。全社的には相当だろうし、中には冗談では済まない怪我をした人もいるだろう。雪遊びに興じていられる子供はいいが、面倒な処理を負う大人はつらい。雪が迷惑に感じるのは年を取った証拠かね、と同僚が呟いた。降られた回数だよ、と答えた。毎年降る雪国の人には、ただの天災だろう。▼このたびの雪は、どうもあまり詩情の湧かない光景に思えた。それより音が気になった。破片を砕く音の車庫に満ちる残響。深々とリバーブをかけた一打。こんな大胆な音もいいなと思った。
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