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「さえかえり山風あるゝ常盤木に降りもたまらぬ春の沫雪。」▼春めいたかと思いきや寒波が寄せてふたたび寒気がぶり返す。今年は模範的な余寒の図である。今週の土曜日などは、夏着でも通じる暖かさだった。▼冴えるという言葉には冷たさのイメージが伴う。もとは「澄み通る」と「透き通る」と合わせたような、色や光の混じりけのない鮮やかさを表現する言葉だが、冬の寒さにそうした光景が目立つためだろう、凛とした冷たさの意もまた「冴える」の中に含まれた。温度の低さで輪郭が強調されるという関係は、不思議なことだが直感的である。寒さは身を引き締めるからだろうか。暖かさは朧月や陽炎を想起させるからだろうか。▼<さえかえり>とは、冴えに返ることなので、一度は暖かくなっていることを表している。溶けなやむアワユキの、春になりきらない情緒。大雪の懸念された昨日はみぞれに終わり、いまこの地に雪はないが、路地はまだ雪道のように冷たい。
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