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中唐の詩人・白居易は、政治批判の代償として江州の司馬に左遷された。その白居易を深く学び入れた菅原道真は、無実の罪で太宰府へ左遷された。ともに左遷の身を詠じる歌がある。「遺愛寺の鐘は枕を峙てて聴き、香炉峰の雪は簾を掲げて看る」とは白居易。「都府楼は僅かに瓦の色を看、観音寺は只鐘の声を聴く」こちらが菅原道真。▼道真が白居易を学んだのが、同じ左遷された境遇だからなのか、単純にその時代の定番教師だったからなのかは知らないが、絶景を誇る山のふもとに隠居所をつくり、寺の鐘と雪の眺めに悠々自適の生活を送る白居易と、無実の罪と知りながら忠誠心を貫き、自ら謹慎しつづけた道真のあいだには、心情に大きな差異がある。その差異が言葉の上にもよくあらわれているようだ。▼どれほど深く学び真似ても、真剣に造られた作品の中身は必ず自分の資質と境遇に拠る。技巧や形式の模倣など、読み手からしたら瑣末ごとに過ぎない。好例である。
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