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音楽のプロデューサーも、過去は自ら何かの楽器を演奏していた人であることが多い。演奏者としても音楽に詳しいのは結構なことだが、ミックスエンジニアの立場で困りものなのは、こうした「上司」がしばしば自分の楽器を贔屓したがることだという。「もうすこしギターソロの音量を上げてくれないか。」▼言われるがままに音量を上げてしまっては全体のバランスが台無しになる。しかし要求を無視するわけにはいかない。「わかりました」と答えて何もしないという老獪な手段も気がひける。そんなとき、効果的なのが「トラックの頭だけ音量レベルを上げる」というテクニックである。▼どんな楽器でも、歌い出しが強いと後のフレーズでも音量が大きく聞こえる。この錯覚を逆手に取るのだ。そうすれば全体の音量を上げすぎることもなく、楽器間のバランスも壊すこともなく、リクエストに答えることができる。聴かせたい音を聴かせるための優れた技巧のひとつである。
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