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月の黒い影をうさぎとする日本の風習は、中国の伝承「白兎薬を擣く」に由来するが、伝承の本家中国では、兎の代わりに蟾蜍が棲んでいる。そうして臼の代わりには、高さ五百丈の巨大な桂樹が聳えているそうだ。どちらも仙薬、薬の代表格。月という再生のシンボルにふさわしい配役である。ローレルが中国で「月桂樹」と書かれる所以だ。和名ゲッケイジュは、この漢字をそのまま読んだのである。▼なにかと神秘的なイメージの強い月桂樹。その枝を編んでつくられる月桂冠は、古代ギリシャでは勝利と栄光の証であった。花言葉はそのまま「名誉」「勝利」である。戦地では薬となり、帰還後は褒章となる、なんともいいこと尽くしの植物だ。世界に散らばる数々の伝承・言葉を見ても、人は薬となる自然物に良い印象を与える傾向がある。医者もない時代、苦しみを癒してくれる存在にいつも深く感謝していた証拠だろう。しかし――花そのものの花言葉は「裏切り」である。
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