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1960年、パリ。夜遊び娘のレジーヌ・ジルベルバーグがナイトクラブ<シェ・レジーヌ>をオープンしたとき、彼女は最初の月、開店して間もなく「満員」の札を出した。新しい店が出来たのでと足を運んだ客は例外なく門前払いにされた。店の中からは楽しそうな音楽が漏れ出してくる。そうして次の月、通常通り店を開けた日、あっという間に店は人で埋まった。▼人気のない商品を引く手あまたに魅せる手法は不動産に限らず手垢のついたやり方だが、レジーヌの手口はそういう定番の手法とは一味違う。称賛されるべきは空の店に札を出し続けた度胸だろう。ハッタリがバレたらどうするのか。「本当の」初日に客がまるで入らなかったらどうするのか。いくらでも考えられる未来への恐れをものともせず淡々と虚勢を張り続ける肝の座り方に、畏敬の念を感じずにはいられない。よほど成功を信じてなければ出来ないことだ。下積み娘の、現場の直観に根ざした執念である。
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