400
Post/Edit Page
忘れられない日記がある。いや、正しくは、しばらく忘れていたが、読んでいる本に触発されて思い出したというべきだろう。真剣に小説家を目指しているという、ある女子高校生の日記である。▼内容は、彼女の学校で開催された作文コンテストについての恨みごとだった。テーマのない自由課題。彼女はここぞとばかり、全身全霊をかけて<素晴らしい作品>を書き上げたが、大賞の名誉に与ったのは別の女生徒だった。公開された大賞作品は、数日前に死んでしまった著者のおじいさんについて生前の思い出を語るという、涙をさそう、そして、<あまりにも平凡な作品>。「くだらない。そんな特別な体験出されたら、勝てるわけない。許せない。私にも特別なことが起こればいいのに。あんなのでいいなら、うちの爺だって、死ねばいいのに。」▼狂気、執念、あまりに幼い誤解。読んで背筋が凍ったのを覚えている。彼女は今、何者かになっているのだろうか。私は知らない。
pass:
Draft