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絶対音感は、なにか特別な才能のように思われている。事実、たしかに音を単体で判別する能力は希少である。しかし、なぜ音に限りそんな物々しい「才能」があるのだろう。私たちは色を見て何色かを言い当てるとき、通常、ほかの色など必要としない。赤を見れば赤とわかる。青を見れば青とわかる。しかし「絶対色感」は才能ではない。少なくとも特別な才能とは思われていない。人間の他の五感と比べれば、特殊なのはむしろ相対音感の方なのだ。▼レの響きだけではそれがレとわからないが、続いてドが鳴りそれがドであると告げられれば、途端に最初の音がレだったとわかる――この現象は、赤い色を見ても赤だとわからないが、続いて青を見せられそれが青だと教えられるやいなや、先の色が赤だとわかるというようなものだ。音も色も器官がなにがしかの周波数を感知するという知覚の構造は同じなのに、片や言語ラベルの割り当てに比較を要するとは、奇妙な話である。
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