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将棋の駒で何がいちばん好きかと言われたら、香車と悩んで桂馬と答える。香車の使い勝手も素晴らしいが、桂馬の奇想天外さ、神出鬼没さ、ポジション取りのいやらしさ、展開の決定力、銀とならんで未来を切り拓く勇気――まあ、いくらでも言いようはあるが、他の駒にはちょっとない変わり者の風情は魅力的だ。タテとナナメをともに駆使して、敵駒の壁もなんのその、不思議な位置にひょいと飛ぶ身の軽さである。▼動きの制限がきついというのも逆に良い。安易に動けないからこそじっと機を待ち、時来たれば一気に間合いをつめていく。その点、チェスのナイトは動けすぎて逆にせわしなく感じる。とはいえ桂馬とナイトはどちらもその動きの面白さ故に初心者が好みやすい駒ではあろう。私もまた素人として素直に彼らの動きが好きである。強者を他に立てて、任せて、我が道を行く自由さ。目の前のことにとらわれず、どこかへ飛んで行く勇気が面白い盤面を創っていく。
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