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午前から小雨と曇りをくりかえす情報不安定な空模様。けれども午後三時、強烈な日差しが来て路地の彼方へ虹が出た。地上からすうっと直角に伸びて、最後にやや首を傾げたような、アーチを描かぬ置物のような虹である。各色も鮮やかに塗り分けられて、お手本のような虹の色を披露していた。後ろではご婦人が二人、高周波の歓声をあげながら携帯で写真を撮っている。「子どもたちも呼んできてあげて!」▼それから始まるであろう大規模な鑑賞会に参加するほど緩やかな散歩でもなかったので、写真も撮らずに印象だけを網膜に残して立ち去ったが、それにしても虹なんてまともに見たのは何年ぶりだろう。けして大袈裟ではなく本当に長らく見ていなかった。どうして見ていなかったのか。昼に外へ出る機会が少なかったからか、雨降りの日に傘なして散歩する気まぐれを失くしたか、遠くの空を見晴かす余裕がなかったか――虹のオブジェを脳裏に描いて空想に坂を降りた。
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