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閉店ぎりぎり、「本日はまことにありがとうございました。またのご来店を……」のアナウンスを浴びながら、店には申し訳ないと思いつつ、執拗に河出文庫を物色する。探しものではない。岩波・青の目当てを手に入れて、レジへ向かう途中、なんとなく天啓が差したとでも言うべきか。河出に掘り出し物があるかもしれない。そんな気がした。▼これだけ切り取るといかにもスピリチュアルな危ない人だが、河出と定めた根拠はあって、私は近頃、ダンスミュージック関連の「最高にクールな」一連の書籍群を超える素敵な音楽読み物を求めていて、そういう心が音楽系エッセイに強い河出を脳裏に引き寄せたものと思われる。そうしてそんなあやふやな印象に身を委ねるには、人のいない二十三時のあおい書店はうってつけだ。▼果たして、掘り出し物はあった。私の鑑識眼が正しければ、恐らくA級品である。「思いのほかつまらなかった」などと書く日が来ないことを祈りたい。
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