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機能和声とはコロケーションである、という類推に辿り着いた頃、私はもう充分に思考実験を楽しんでいたので、結論の妥当性について真剣に考えはしなかった。音楽理論の特徴は、他の学問領域とのあいだに類推が成立しやすく、しかしその類推から具体的に役立つ定理が得られないところにある。音楽は言語だ。音楽は建築だ。音楽は教育だ。音楽は哲学だ。まあ、要するに、なんとでも言えるのである。▼それでも私が最近の入力から得た着想をパズルのように組み合わせて機能和声≒コロケーションという、まあ嘘だろうなと自分でも思うようなカルトな近似式に辿りつくまでにふらふらした道程は、今この空疎な目的地から振り返り見ても、なかなかにかけがえのない有意義な獣道に見える。歩いたのだから。脳はそれだけ運動をした。▼類推の世界にもどっても、言えることはひとつだけだ。機能和声に始まる二十世紀音楽理論は、読点や句点の打ち方だけは教えてくれない。
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