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『和文英訳の修行』という名著がある。大学受験の参考書で、昭和時代を思わせる古い字体で綴られたストイックな「修行」の書。定型句を暗記し、型に嵌めて応用していく、それをとにかく数をこなすことで手と脳に刷り込んでいくという、極めて実践型の、砕けた言い方をすれば脳筋型のトレーニング本である。▼これが名著たる所以は、その修得効果の大なることと、全て修了したときの「こんなこともう二度とやるか、俺は英語の本でも読むぞ!」とでも言うべき反発の気分にある。ダメじゃないですか、という反論にいつも私は真顔で答えてきた。私は素直に、そういうものこそ良書だと思う。嵌っているときはひたすら信奉でき、信奉しているときには実りをもたらしてくれ、そうして、全てを終えたときには、もうここにはいられないという強い焦燥、真逆の方向へ飛び出す反抗心というエネルギーを与えてくれる。そういう灰汁の強さにこそ、私たちは耽溺すべきなのだ。
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