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菊地成孔&大谷能生の名コンビが数年前に東京大学でジャズの講義をひらいたとき、講義は好評で、当人たちは単発と思っていたところが、予想に反して大学側から来年もぜひという声がかかった。そういうことなら我々も、と頷きかけたところで、こう言われたという。来年もぜひまた同じ講義を――同じ講義だって。それはつまり、毎年毎年、駒場の門をくぐってくる新入生たちに、レコードのように同じ内容を繰り返せということか――こうして二人はしばらく行方をくらませた。▼どこまで盛られているかわからないが、こんなエピソードを読んだ。事実、東京大学での講義が再び行われることはなかった。彼らが教壇に立つのはほとぼりが覚めた頃、慶応大学でのことである。学問とアートの摺り合わせの難しさ、文化の違い、時計の相違をひしひしと感じるささやかな逸話だ。同じことを二回なんてやってられるかというこの態度、私は非常に好感が持てる。そうでありたい。
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