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言葉は、それが論理として示している内容以上のものを人に伝える。ニュアンスと呼ばれることもあるが、ここでは発話者が意図的に込める言外の意味というより、読み手が言葉面からその言葉が「どういう思考からの写像なのか」を推測しようとする行為から生まれる、意思疎通の道具としての言葉が持つベクトル性である。▼たとえば人に遅れて数学を志し三角関数を勉強中の大学生に「それ、普通は中学でマスターするものだよ」と言う場合、その「普通」という単語は正規分布の中央という位置だけでなく、明らかに負の方向への射程を孕んでいる。だから、この言葉が伝える内容は「あなたは普通ではない」ではない。内容が平易な事実に過ぎない分、聞き手の意識はベクトルの指す先へ飛ばされ、結果として「軽蔑・嘲笑」のシンボルが伝達されることになる。▼伝えるという行為の責任は、自分の意志を言葉に託しただけで終わるものではない。何を言うにも言い方ひとつ。
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