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400年の時を越え、ケプラー予想は解かれた。四色問題で物議を醸した力技で。プログラムによる「虱潰し戦略」によって。他の数学定理の礎になるわけでもなく、幾何学的真理の組み合わせから導かれるわけでもなく、人が検証することもできない証明から我々は何を得るのか。これはまたひとつ、数学界の厄介な問題である。▼ゲーデルには証明すべき定理そのもの以上に、わかりやすい敵や味方がいた。クロネッカーの亡霊に苦しめられたり、フォン・ノイマンというトリックスターに助けられたり、ヒルベルトというラスボスを倒したりした。証明をめぐる事実そのものがドラマティックだった。それと比べればケプラー予想の証明にはクライマックスがない。▼しかし、それでも一冊の本を読ませる力が著者の「物書き力」である。地味で地道な結末といえども、答えに至る過程と解説と詳細な付録は面白かった。やはり、数学ドキュメンタリーはこうあるべきだと思うのだ。
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