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先見の明にあふれた偉大な音楽家――『4分33秒』が単なる奇異な作品としてひとり歩きしてしまったために、なにかと誤解されることの多い天才、ジョン・ケージは、学生時代、伝統的な西洋音楽の習得を苦にしていた。「わたしには昔から……和声のセンスがなかった。そのためにいつも壁にぶつかるのだと、シェーンベルクに言われたよ。」そのことが、やがて彼を音楽体験の本質を考察する道へと導いた。▼ミニマリズムの嚆矢と言われるスティーヴ・ライヒも、西洋音楽のテクニックを学ぶのには手こずったらしい。だからこそ彼は、音楽をより抽象的な空間の中に求め、インドの古典旋法やアフリカの打楽器演奏からも多分に影響を受けた。そうして、ゆるやかに変化しつづける構造というアイデアに至った。▼ふたりとも、自らが弱点だと認めたところに強みを築いている。短所を長所に変えるとは、まさにこういうことだろう。無理やり認識を捻じ曲げることではない。
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