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今でこそ「芸術家」や「作品」は主張して当然の概念であり、尊重されてしかるべき名誉と思われているが、少なくとも絵画や音楽について言えば、ほんのルネサンス以前までは作者自らが自分の作品を「私の作品」だと声高に主張するような風習はなかった。彼らはまだ芸術家ではなく、職人だったのである。職人は、質の高い品を創りだすことを名誉とする。自分の創り出した製品に自分の名を刻むことを誇りにする人々ではない。▼そんな人々が自分の名前を売ること、残すことに興味を持ち始めたのは、「私」という自我の発達云々という哲学的な理由よりも、恐らくはメディアの普及によるところが大きい。要するに、名前を売るための経路が充実したから、名前を売りたい人が増えたのだ。インターネットの普及によって、ラーメン屋の店主からブログ主まで「私」をアピールし始めた今日のことを思えば、かなり確からしい推測と言えるだろう。皆、名を残したいのである。
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