400
Post/Edit Page
「言葉の無力について雄弁にまくし立てる」とは、これまで聞いたロマン派の総括として最も優れている。皮肉にも後世からロマン派と名付けられてしまった彼らは、もとより歴史上最もロマンなき場所と時代に生まれ、現実逃避を余儀なくされた人々であった。現実を越えていくには、現実との因縁深き言葉の力を逃れる必要がある。言葉なき世界に死んだ神は居る。▼しかし同時に、彼らの時代は大衆文化の花盛りでもあった。生きていくためには大衆に受け入れられる必要があった。言葉は無力、言葉は無力と独り沈思黙考しながらも、リクエストに応じていれば飯の種を寄越してくれるパトロンはもういない。故に彼らは自分たちの美学を売りに出す必要があった。言葉の時代ではないのだ。言葉を超えた世界を信仰するのだ。我々の音楽こそが、つまりそれである――。▼言わば「沈黙」が大々的に売られたのである。語りえぬ芸術のロマンという模範はこうして生まれたのだ。
pass:
Draft