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とある人の話。十年以上前、彼は日本に本社を置く企業の海外子会社に入社した。世はインターネット全盛期。情報化時代まっしぐらの時代である。誰もが時空を超えた融通無碍なビジネスを夢見ていた。その会社もご多分に漏れず、世界展開を目論んでいた。社のスローガンは「グローバル」であった。▼彼は慄然とした。会社方針を通達する回覧資料には「Grobal」の文字が躍る。これは失敗に終わるなと直感した。果たして、結果は失敗に終わった。その失敗が些細なスペルミスのせいかどうかは誰にもわからない。しかし、彼の直感は当たってしまった。しばらくのあいだ世界への進出意欲は鳴りを潜めた。方針にしがみつき、グローバル化と心中しなかったのはせめても賢明であった。▼十年の時を経て、その会社は再び海外で戦う意思を見せているようだ。大丈夫、今度は力がある。資料にも「Global」の文字が輝いている。やれるんじゃないかな、今度こそ。彼は微笑んだ。
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