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深夜のコンビニ。会計を済ませて出ようとすると、背後で大きな音が鳴った。ガラス物の割れる音。誰かが会計前の商品を落としてしまったらしい。振り返ると年配の女性が怪訝な顔で粉々になった破片を見ている。駆け寄るレジの店員さん。女性が口を開いた。「割れちゃったのよ、これ。」▼そう言ったきり、一言謝るわけでもなく、弁償しようとするそぶりを見せるわけでもなく、彼女は残りの商品をレジへ運んでいった。片づけるより先に会計を済ませて、後始末は自分がいなくなったあとにやって欲しいと言わんばかりの動きである。▼特別に横柄な態度だったわけではない。弁償による金銭的損害を避けるために、わざと高飛車なふるまいをしていた様子でもない。ただ、その人にとってはそれが自然で、当然のことだったのだろう。夜も遅かった。私に、その事件の行く末を見届ける余裕はなかった。店を離れて坂道を歩き出す。イヤな顔ひとつしない店員さんは偉かった。
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