2006年08月22日

●88回選手権の総括

横浜・駒苫・早実のトップ3、と予想した今大会であったが、横浜のまさかの敗戦、6点差の逆転、4度にもわたった逆転サヨナラ劇など打撃優位の展開を経て、トップ3の2校、駒苫‐早実の決勝となった。

今回、5日間の甲子園滞在においても両校のバランスの取れた力は明らかであったし、接戦に対する強さもいかんなく発揮されていた。この為、3点以内の勝負と予想していたが、内容は1‐1の引分。
野球はロースコアで1点の取り合いになった方が本来の旨みが出る。決勝になって初めて守備優位のゲームが行われたと言って良いだろう。満塁策、スクイズ、前進守備、送りバント。点が取れない時に、どう取り、どう守るか。これが野球を突き詰めた時に出てくるものなのである。打撃だけが売り物のチームが好投手に出会った時に対応できなくなり敗戦するのはこのロースコアに慣れていないからだ。両校には攻走守、精神力のあらゆる力が備わっていた。
細かく考えれば、投手力は早実、打撃力は駒苫に分があった。結果的には5試合目で初めて後攻を取れなかった駒苫には24イニング、ずっと不利な展開だった事がギリギリの勝負を分けた決め手だろう。駒苫主将、本間との試合前ジャンケンに勝った事が、早実主将、後藤の最大のファインプレーだったと言って良い。

今、試合の録画DVDを見終えて、私は今一度感動している。北海道勢初優勝、2連覇、不祥事、選抜辞退、監督一時辞任。確かに3連覇はならなかったが香田監督が胃潰瘍(胃がんでない事を祈る)になりながらも駒苫は3年間も高校球界の頂点に立ち続けた。3年連続決勝進出は7~9回和歌山中学、17~19回中京商業、KKコンビの65~67回PL学園と今回の4度だけ。毎年、選手やチームカラーを変えながら決勝まで来たようなチームは過去、存在しない。早実、和泉監督と共に敬意を表したい。また、甲子園に帰ってきて下さい。

6月のある日。和泉監督は選抜後、まるで試合に勝てなくなり練習に力が入らなくなった生徒達にノックをするのを突然やめた。選手たちが練習を再開できるようにお願いに行くと、監督は一人、一塁ベース横に立ち、コーチにバットを持たせて、その打球を黙々と受け始めた。丸く太った白髪の中年男が真剣な目をして一塁ベース横でゴロゴロと転がる。
その光景を見て、斉藤、白川達選手は涙した。予選を勝ち上がるにつれ、早実は一つのチームになった。早実は決してマスコミが取り上げるような「ハンカチを持った斉藤王子のワンマンチーム」ではない。いつの時代でも技術を上回る精神力こそが真の頂点を手にする事が出来るのだ。
早稲田実業学校高等部の皆さん、初優勝、おめでとう。

最後に斉藤が今大会記録した偉大な記録に触れる。奪った三振、78個。球史に刻まれた不滅の大記録83個(徳島商、板東英二(あの世界ふしぎ発見に出てくるおじさんである))は永遠に破られないと思っていたが、去年の辻内(65個)に続いてかなり近い記録が出た。もしまた再試合を経て優勝するようなチームが出れば今度こそ破られるのかもしれない。
投球イニング69も最多だ。これを投げきるスタミナ。ベッカム、金本らが使う高酸素器具などの科学力と共に特筆すべきである。

田中は大会直前に38度の高熱、脱水症状など体調を整えられなかった。もし万全であれば決勝もどうなっていたかわからない。彼は言い訳したくなかったろうが、敢えて触れておく。

長文、失礼しました。選手たちの将来の飛躍を祈ります。

コメント

横浜ベイスターズが駒苫の田中狙いを公表しているらしい。もうちょい先だけど、ドラフトが楽しみだ。斉藤は迷ってるらしいけど、ピッチャーならプロいってもいいとは思うけど…。駒苫の3番を打ってた中澤もどっかしら引っかかるだろう。多分阪神あたりが取りに来ると思うけど。

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